2016-07-31

中村紘子がなくなったというニュースを聞いた。72歳で大腸がんだったそうだ。女性で72歳というならば、まだ若い。ご冥福をお祈りしたい。

この人のピアノリサイタルを一回どこかで聴いた覚えがあるのだが、それがどこで何を演奏したのかが覚えていない。たぶんショパンの曲だったような気がするが、どこの会場だったろうか。埼玉か東京での演奏会場だったような気がするのだが。

この人の旦那さんは庄司薫という芥川賞受賞の有名な作家である。私の20代頃は、この人は大変な人気作家で、『赤頭巾ちゃん気をつけて』というベストセラーを書いた。この本は私も読んだが、実はあんまりぴーんとこなかった。でも、『白鳥の歌なんか聞えない』はけっこう好きな小説で何回か繰り返し読んだ。

中村紘子と庄司薫は夫婦である。典型的な勝ち組人生である。二人とも名声とお金に恵まれて人生に何も不満はなかったのではと思える。庄司薫は作家活動をやめてしまったが、これはあんまりにも、すべてが順調にいきすぎて小説を書く必要性がなくなったからであろう。

小説家などは、自分の抱える問題点を苦悩しながら、その解決策を模索する、あるいは、その問題を見つめ直すために、小説を書くのだと思う。もしも、彼が、中村紘子との結婚生活がうまくいかなかったとか、思わぬ借金を背負ってしまった、などということがあれば、作家活動を続けていたのではないか。

この時代の作家では、柴田翔がいる。『されど我らが日々』はとても大好きな小説であった。何度も繰り返して読んだ。でも、この柴田翔もすぐに小説は書かなくなって、ドイツ文学の専門家として生きていった。

中村紘子、庄司薫、柴田翔などという自分の若い頃に親しんだ名前を再度思い出し、懐かしく感じた次第である。

photo credit: Peaceful keys via photopin (license)
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