人間は不便な動物だと時々思う。ちゃんとした食事を取らないと死んでしまうのだ。しかし、それに対して。草食動物たちはただ草を食べればいいのだ。草ならばどこにでもある。食べても、雑草はすぐに生えてくる。ひもじい思いをすることはない。ヤギ、ヒツジ、ウシなどは本当に生存力の高い生き物だ。

これらの動物たちは反芻動物と呼ばれて、繊維を消化する酵素が胃の中にあり、長時間口をもぐもぐさせながら、これらの草を消化するのだ。

人間が草食動物だったら、即、食糧問題は解決である。野原や山に行って好きなだけ食べればいいのだ。争いごとも少なくなる。生活保護を受けられなくて、餓死したという悲劇も無くなる。老後の心配もない。ただ、外に出て草を食べればいいのだ。老後破産という言葉などもなくなる。ホームレスも生き生きと生きていける。

しかし、草を食べることができないがゆえに、人間はいろいろな進化を遂げたとも言える。頭を使って、狩りをしたり、穀物を栽培することを覚えたり、発酵などもできるようになった。それらの不便さを乗り越えようと努力してきたゆえに、人類はこれだけ発達してきたのだ。

でも、世の中には、やはり大きな不公平がある。富が一定の階層にだけ集中して、多くの飢える人々が存在している。しかし、草食動物の世界では、みんなが平等で一人だけ草地を独占するということはない。肉食動物では、獲物を一人で独占することもあるが、草食動物では、原理的に、全てが平等である。草食動物の世界では、富の偏在から生まれる生活保護、ホームレス、老後破産などは存在しない。

人間が草食動物であったら、と時々自分は夢想する。

photo credit: caribb Rural Life via photopin (license)
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