先日、高速道路をピンクレディの曲を聴きながら運転していた。とりわけ、『UFO』という曲がリズミカルで面白い。内容は「自分の恋人には超能力的な才能があるようなので、宇宙人ではないか」と疑う女性の話である。しかし女性は「彼氏が宇宙人でも(あるいは、だからこそ)付いて行く」と決断する点が特徴的である。

該当する部分の歌詞は面白い。恋人が宇宙人ではないかと疑って、鏡をうつしてみたり、あるいは光を当ててみたりもしたが、どうもやはり地球人のようである。そして次のような歌詞が続く。

ああ突然オレンジ色
ああ光が私を包み
夢見る気持ちに私をさせて
どこかへさらっていくわ
やっぱりそうなの素敵なあなた

やはり、恋人は宇宙人だったのだ。そして、自分をさらっていく。そのことで女性は歓喜している。

宇宙人とは本当は不気味な存在である。得体の知れない、訳のわからない存在者である。訳のわからない存在者とは、我々の理解を超えた存在であり、天使かもしれないし、悪魔かもしれない。「異人」なのだ。

自分の相手が天使か悪魔なのか、相手の本当の姿は分からないで結婚するのは女性の運命かもしれない。女性にとって、結婚とは今までの慣れ親しんだ生活から大きな変化を覚悟することである。しかも相手は優しい王子様か、DVの乱暴者か、本当の姿は分からないままで新しい生活が始まる。異者との生活に飛び込んでいかなければならない。

『UFO』という曲では、「さらわれていく」覚悟があり、そのことを肯定的に受け入れようとする女性の姿を現している。そんな理由で、この曲はヒットしたと考えられる。

話は変わるが、昔の童謡に『赤い靴』という曲がある。

赤い靴はいてた女の子
異人さんにつれられて行っちゃった
横浜の埠頭から
汽船に乗って
異人さんにつれられて行っちゃった

メロディーが不気味であり、悲しげである。赤い靴をはいてた女の子が異人さんに連れられて行っちゃったのだが、そこでの生活は苦しくて、悲しい生活であることを暗示しているような曲である。この曲も女性と結婚との関係を暗示しているように思える。

この二つの曲の歌詞は女性の生き方のメタファーであると判断する。男性から見た結婚は今までの生活にプラスアルファという面であるのに対して、女性から見た結婚は今までの生活からの完全な離脱となることが多い。つまり生活が全面的に変わってしまうのだ。その変わっていくことを恐ろしいと感じるか楽しいことと感じるか、あるいは両方の感じを同時に抱くのか。

女性の生き方をなんらかの形で暗示した点で、これらの曲はヒットしたのではないか。

photo credit: Walther Siksma WS20161024_5428 Ready to beam up via photopin (license)
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