数年前に、評判になった本、『老後破産』(NHKスペシャル取材班、新潮社)を再読している。読んだときの感想やそのことについての記事もこのブログで書いている。その記事を書いたときは、まだ定年前であった。「もうじき定年だな」と思いながら読んだのだ。どんな生活が待っているのか、と不安な日々にこの本を読んだ。

ただ、その後、嘱託の仕事を知人から紹介してもらい、何とか持ちこたえている。気分的には老後破産になるまで、数年ほど余裕をもらったという気持ちだ。再読して、やはり気分が滅入ってくる。

菊池幸子さん(仮名)の話は読むのが辛い。彼女は80歳代で都営住宅に住んでいる。リウマチでよく歩けない。足がパンパンに腫れ上がり、トイレまで行けないので、ポータブルトイレを使っている。台所までの数歩歩くのが非常に苦しい。介護保険を利用しながら、食事を作ってもらい、生活をしている。

訪問看護は週に一度、訪問介護サービスは毎日一時間ほどサービスを受けている。収入は国民年金と遺族年金で月に8万円である。何やかんやで月に11万円ほど使うので、毎月3万円を貯金からおろしている。

菊池さんは介護訪問のヘルパーさんが訪問してくれる1時間ほどが外部との唯一の接触であり、基本的には一日のほとんど23時間はひとりぼっちである。足腰が悪いので外出は一人では難しい。

菊池さんは夫がいたが、3年前に夫はガンで亡くなった。それまで、夫の年金と合算して何とか生活ができていたが、夫が亡くなり、自分の年金だけの生活になると、とたんに生活は困窮し始めた。

一人息子がいたが、息子は40歳で急死した。運送会社に勤務していて過労死のようである。本来ならば、息子に頼っていく人生だったのに、子供にも先立たれて、菊池さんは現在の窮地に入り込んでしまった。

読んでゆくと、身寄りがなくなったお年寄りが多いことに気づく。子供や配偶者がいない。孤独である。年金が国民年金だけである。その意味では、サラーリマンは厚生年金や企業年金が加算されるので助かっている。だが、その国民年金さえもない場合もある。

この話に出てくるお年寄りは、貯金が少ない。そして毎月取り崩してゆくので不安である。貯金がゼロの日がいつか来る。

いろいろと読んでゆくと、体が健康なうちは何とかなるという気がしてきた。自分を含めて高齢者にとって、年金や貯金や家族よりも、まず自分自身が健康であるという点が一番大切なことである。

その健康を失わないように、無理をしないというが一番の教訓であり、今自分ができることである。健康が最高の財産である。いろいろと勉強になる本であった。