2016-01-26

『ルポ老人地獄』では老健の実態を報告している。入居者は老健に長くいることはできないようだ。最近は入所者は1、2ヶ月自宅に戻ってから老健に戻る方式を取っているという。それは政府の方針と関連するようだ。93ページに次のように記してある。

政府は12年度に介護報酬を改定して、自宅に帰る人を増やしたり、新しい高齢者を多く受け入れたりした老健ほど介護保険からの報酬を加算するようにした。施設が不足して介護報酬も増加しているために、厚労省はなるべく在宅介護を増やそうとしているのだ。そのために、老健にいる高齢者も帰そうと促される。

政府も金がなくなってきた。老健で受け入れる人には限りがある。自宅で介護してもらいたいという考えだ。しかし、昔のように大家族で、子供たちが一緒に住んでいるわけではない。一人っ子あるいは子供がいない場合もある。そんな家族ではどうして自宅での介護ができるのか。

「老健を出されても、帰るあてのない人も多い」そうだ。厚労省は在宅介護という言葉を金科玉条のように唱える。しかし、在宅介護とはそもそも可能であろうか。介護する人も大変だ。息子や娘たちが介護のために、欠勤や年休が多くなり失職する場合もある。

とにかく、この本『ルポ老人地獄』を読むことは辛い。何も解決策は見えないからだ。つまり構造的な問題なのだ。誰が悪いと言えない点にある。年寄りが増えてしまった。子供を産まなくなった現代の世代が悪いのか。しかし、現実には子供を産みたくても教育費や生活費の負担を考えると生めない世代が多い。また、自分の収入を考えると結婚をためらう男も多い。解決策はない。というのが結論か。ただ、自分自身のことに当てはめれば少しでも老後に備えておくべきだと言うことを考える。