昨晩は、YouTubeで昔の音楽を色々と聴いていた。懐かしい。最近の音楽は騒がしいだけで何が何だかんだわからない。昔の曲は静かで心にしみる曲が多い。どうしてか、これは人間が20歳前後の時に聴いた曲をいつまでも懐かしく思うからであろうか。今の若者たちも、この現代の騒がしい曲を将来は懐かしいと思うのだろうか。

さて、久保田早紀の『異邦人』だが、これは素晴らしい曲だと改めて思う。しかし、YouTubeによれば、これは彼女が自分で作詞作曲したそうだ。中央線で通学する途中に作った曲である。初めは『白い朝』というようなタイトルだったそうだが、レコード会社の判断で『異邦人」になった。

非常に品の良い曲で、日本以外の土地を想像させる。久保田早紀がピアノを弾きながら、エキゾチックな曲を歌い上げるのだ。

昔、新聞で久保田早紀に関する記事を読んでことがある。その記事を切り抜いていただが、今はどこに保管したのか分からない。うろ覚えだが、久保田早紀は自分が好きなものとして、砂漠、遊牧民などをあげていた。この曲を聴くと、広大な砂漠を黙々と歩くラクダの群れを連れた遊牧民が浮かんでくる。

久保田早紀は一曲だけのヒットであった。作曲家などに依頼すれば、それこと量産してくれるのだろうが、自分で手塩にかけて曲を育てるとなると、心に残る曲はせいぜい1、2曲がやっとであろう。そのことを考えると、歌手としての節度や見識を感じるのだ。

さて、こんな美しい人でも、還暦を迎えるという。でも、上品に老けたなという印象だ。


フランスの作家カミュに『異邦人』という小説がある。こちらはロマンティックな要素は全然なくて、変人、奇人、この世の秩序にうまく適応できない人、というニュアンスだ。

私は、異邦人という言葉を聞くと、カミュの作品と久保田早紀の曲の2つを同時に思い出す。カミュの小説は、この世の不条理を示して救いがない感じだが、久保田早紀の曲は寂しさを楽しんでいる余裕がある。