先日、若い女性(20代の前半)と漫画について話をする機会があった。その女性をAさんとする。Aさんは、最近はそうでもないが、小学校や中学校では漫画をよく読んだそうだ。Aさんが読むのは、主に少女漫画と女性漫画であり、男の子の読む漫画も時折読んでいたとのことだ。以下、Aさんの話をまとめる。

(1)少女漫画と女性漫画はほとんどが恋愛ものである。Aさんは、小学校の3、4年ぐらいから恋愛ものを読み始めた。5、6年生ぐらいから恋愛ものは完全に理解できるようになり、楽しめるようになった。これはクラスメートの女の子たちも似たような状況だと思う。

(2)恋愛ものは定番がある。主人公はやや地味な女の子だ。それが、イケメンの男性やクラスの憧れの男の子から突然好かれる。そして、主人公よりも美人な恋敵が現れる。恋敵は色々と意地悪をしたりするが、それらの困難にもめげずに最終的にはイケメンと相愛相愛関係になる。Aさんは、主人公の女性に感情移入してしまい、恋敵の存在にイライラしてしまう。漫画の世界だが、恋敵が憎くなるそうだ。それだけ、Aさんは漫画に対する思い入れが強いということだ。

(3)Aさんは小学生の高学年から好きな男の子がいた。中学生になると、2年生のから高校の1年生まで、3年ほど両思いで付き合った男の子がいた。私がその男の子との思い出は楽しい思い出であったかと質問すると、Aさんは「無駄な付き合いであった」と述べた。少女時代の3年間の交際を「無駄であった」と言い切ってしまうのは不思議が気がする。何かがあったのだろうが、詳しい事情を聞いたりするのは野暮なので、それ以上は分からない。


Aさんとお話をして面白かった。少女漫画と女性漫画はほど100%恋愛ものであるが、これはどのように解釈すべきなのであろうか。小学生の時から、そのような漫画ばかり読んでいると、小学生の女の子の頭の中に刷り込みがされる。つまり、「女にとって一番大切なことは恋愛である。女は男を通してのみ、幸せを見つけられるのだ」というようなメッセージが刷り込みされる。

それ以外の漫画があってもいいだろう。しかし、恋愛ものでない漫画は売れない。漫画家は生活がかかっているから、売れない漫画は書かない。だから、恋愛ものばかり書く。するとますます読者の女の子たちは、恋愛脳へとなってゆく。

需要と供給の関係だ。どちらが先とも言えない。男が喜ぶ漫画でも、たくさん恋愛ものが登場する。でもそれは、肉体的な恋愛もので、恋愛における心理は描かれていない。恋愛の時の心の微妙な動きは少女・女性漫画の方が正確に細かく描写されている。