ある女子学生の話を知人から聞いた。その学生は今年の3月末に卒業予定で、卒業論文も合格して、就職先も内定していた。これからの人生、順調な出発のように見えた。

しかし、ただ一つ問題があった。それは彼女が授業料を納めていない点である。母子家庭であり、母親が娘のために働いていた。娘もアルバイトをしながら家計を支えていた。しかし、近年の私立大学の授業料は高い。もう1年以上も授業料を払うことができなかった。

私立大学の授業料は安くはない。早稲田大学の学費を見ると、1年間で、政治経済学部で約127万円、これが理工学部だと174万円である。地方にいる親御さんが子供を東京の私立大学に通わせるとなると、信じられないほどの金額が毎年必要になる。

その学生が通っていた大学も学費は似たような金額だそうだ。文系だそうなので、毎年127万円を納めるのである。大学には延納願いを出して、何回も支払いの猶予を認めてもらったのだが、いよいよ卒業の季節がきてしまった。

本人はできたら、卒業後に働いて、未納の授業料を分割で返したいと希望したようである。しかし、その方法は、大学側には受け入れられない方法であった。

結局のところ、授業料未納で除籍処分になったのだ。

本人は日本学生支援機構から奨学金の貸与を受けていた。大学を卒業するとすぐに奨学金の返還が始まる。これは除籍だろうが、退学だろうが、大学の籍がなくなったら、即、返還が始まるのだ。

彼女は、4年間大学に在籍して、大卒の資格が得られずに、そして奨学金の返済の義務だけ残った。

これは、4月から希望に満ちた出発を迎えるべきだった女子学生にとっては、あまりに過酷な出発である。

話を聞いて、私の気持ちまで重くなってしまった。貧富の格差というこの現実。どう受け止めていったらいいのだろうか。

Unsplash / Pixabay