昨晩はテレビで『戦場のピアニスト』という映画を見た。ポーランドの首都ワルシャワに住むユダヤ人のピアニストが第二次世界大戦で経験した苦難を映画化している。

1939年のワルシャワの光景から始まる。活気に満ちた人々の生活、電車が通り、庶民の生活の営みが描写されている。突然、ドイツ軍の進撃、そしてドイツの支配下のワルシャワ。ポーランド人たちの生活は突然悪化する。特に、ユダヤ人たちの生活は悲惨なものになる。

ユダヤ人たちは狭いゲットーに押し込められる。だんだんと悪化するゲットー内の生活、人々は次第に飢えと病気で倒れてゆく。そして主人公シュピルマンは何とかゲットーから脱出して仲間たちに匿われる。その逃亡生活の中で、ワルシャワーゲット蜂起(1943年)とワルシャワ蜂起(1945年)を目撃する。

誰も住んでいない建物内で飢えに苦しみながら隠れていると、ふとドイツ軍の将校に見つかり、彼の前でピアノを弾く。それをきっかけに将校から定期的に食料をもらうことになる。

そしてドイツ軍の撤退、戦争の終結、再びピアノを弾ける生活に戻る主人公シュピルマンであった。

この映画の見所は二つあると思う。一つは、戦争という醜さ、悲惨さの中で、特に廃墟となった建物の中で、流れるショパンの音楽の美しさである。極度の醜さと極度の美しさという両極端が存在する世界。絶望の中でも芸術の美しさがあるのだ。何曲かショパンの音楽が流れるが、一番の圧巻はドイツ人の将校の前で引く、バラードだ。

もう一つはユダヤ人への迫害の激しさだ。ドイツ占領後は、ユダヤ人は公園に入ることは禁止され、ユダヤ人立ち入りの店ができて、やがてはゲットー内の生活を余儀なくされる。そして困窮生活のなかで、徐々に殺されてゆく。

このところ、ハリウッドのアクション映画ばかり見ていた自分には深く考えさせられる映画であった。それと、各所に流れるショパンの音楽の美しさも良かった。シュピルマンがドイツ将校の前で演じた曲は、ショパンのバラード一番だそうだ。芸術は敵国の将校との心の交流も可能にするのようだ。