文部科学省の科学技術・学術政策局長であった佐野太氏が東京地検特捜部に受託収賄の容疑で逮捕された。収賄であり、はっきりと現金をもらったのではなくて、子どもの入学に便宜を図ってもらったという容疑である。

何百万円の現金を手渡しで渡すのならば、はっきりと賄賂と判断できるが、このように子どもの入学への便宜ならば、立証はかなり難しいのではと思う。

というのは、私立大学では入学試験の成績だけで合否を決めることは希である。たとえば、ある大学の実例では、教職員の師弟ならば、合格させるという暗黙の了解があって、入試委員会では、特に異議の声も上がらずに、合格ととなる。

また、私立大学の理事の関係者などは便宜を図ってもらうのは、よくあることである。要は、私立大学には独自の合格基準がある。あるいは、勝手な合格基準があると言ってもいいかもしれない。

この佐野太氏の場合は、私立大学研究ブランディング事業の選定と関連する。これは、文部科学省の経営改革に取り組む大学を支援するための「特別補助」の一つであって、選定されれば大学は補助金がいただけるのだ。

私立の医科大学は膨大な設備投資が必要であり、その点からも、どうしてもこの事業に選定されて、補助金をもらいたいのである。ただ、選定は大学教授を主体とする審査委員が何人かいて、その人たちの審議で決まってゆく。普通は、事務方が関与することはないが、今回は何らかの形で局長が関与したのであろう。

佐野太氏が東京医科大学の関係者に「息子の入学の便宜を図ってくれ」と、堂々と要求するとは考えづらい。やはり、その点は、局長と大学間の「あ、うん」の呼吸で決まったのであろう。

大学の上層部は、この受験者の親は文科省の幹部だという情報を入手すれば、今後のことも考えて入学させることも考えられる。文科省の幹部の息子だという事情に忖度したならば、忖度したこと自体は罪にはならない。

会社で新入社員を採用するときは、有名人の子どもが応募してくれば、採用担当者は忖度して採用とする。これらは会社の将来の利益を考えて行うことである。これは、民間と民間の間のことでよくあることだから、特に問題とは考えられていない。

今回は、公的な立場の人と民間との間の関係であるので問題となった。はっきりとした形で依頼があったのならば、立証は容易だと思う。しかし、当然、書面などは残していないだろう。口約束だけなのだろう。それも漠然とした口約束なのかもしれない。大学側が点数をかさ上げしたのは、それに対して佐野太から働きかけがあったのか、それとも大学側が単に忖度しただけなのか。

このあたり、東京地検特捜部は立証が可能と判断したので、逮捕したのであろう。ただ、被告に優秀な弁護士がついたりすると、裁判では苦戦するかもしれない。

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