昔は、政治家や芸能人の浮気はさほど問題にはならなかった。以前、自分は市丸と近衛文麿が愛人関係であったのだが、ある程度は公になっていたが、それで騒ぎたてられることもなかった、という記事を投稿したことがある。

ただ、この場合の浮気の相手は主としていわゆる商売女、つまり芸者さんである。男はある程度は浮気する生き物と考えられていて、その場合、相手をするのが芸者であった。その代わりに素人の女性との浮気は御法度であった。

一般人の女性との浮気は認められなかった。しかし芸者などの女性との遊びは半分は公認されていた。

そのような特殊な職業の女性との関係は虚構の関係、男は疑似恋愛を楽しむという割り切りがあった。しかし、時には、そのような職業の女性に純粋な恋愛関係をも投影しようとした小説がある。川端康成の『雪国』や『伊豆の踊り子』である。

永井荷風の小説、たぶん『濹東綺譚』だったと思うが、ある芸者の家に遊びに行くが、2階では先客がいて自分は待たなければならなかった。その間、一階の居間でその女の旦那と一緒になって火鉢に手をかざしながら、「寒いですね」などと言ったりして、互いに気まずい思いをしていたという話があった。

自分が若い頃に読んだ本で、その時は「はあ?」という印象だったが、それが戦前のありふれた日常だったのだ。現代とは風習はかなり異なっていた。

このように、戦前の恋愛小説を読んでみると、プラトニックな恋愛小説でも、一般の女性との恋愛よりも芸者に夢中になる男性の話がよく出てくるので自分は驚く。

家庭の主婦から見たらどちらがいいのだろうか。自分の旦那が素人女性(たとえば、近所の人妻)と仲良くなって、「生きるの死ぬの」と大騒ぎをされるのと、旦那が玄人女性に入れあげて毎月何万円かのお金を使ってしまうのと、どちらがいいのか。

両方とも駄目というのが主婦の意見だろうな。

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