2015-12-28

AKB48 の『恋するフォーチュンクッキー』を聴いてみた。まず、フォーチュンクッキーという意味が分からない。辞書で引くとfortune cookie とは、「(中華料理店などの)フォーチュンクッキー, おみくじクッキー」の意味であると書いてある。

レストランで、そのようなクッキーを出すのか?Wikipedia で調べると、食後に出されるクッキーの中におみくじが入っているようだ。画像があり参考になる。下にその画像を示す。

photo credit: Lesser of two cookies via photopin (license)
photo credit: Lesser of two cookies via photopin (license)

彼女たちの歌と踊りを見てみた。なかなか楽しい歌と踊りである。昔の歌謡曲は暗い歌、深刻な内容であり、「つらい」「わかれ」「くるしみ」という単語が頻出していた。

しかし、この『恋するフォーチンクッキー』は、恋が報われない嘆きを歌っているのだが、とても明るい。未来につながるような明るさがあって、楽しくなってくる。思わず一緒に踊りたくなる。

この歌の特色を述べると、(1)多人数で歌っている。(2)踊りが入っている。(3)リズム感がいい。(4)聴衆も一緒になって手を振ったり踊ったりしている。

これらの特徴が示すことは、『恋するフォーチンクッキー』というこの歌が、歌の一番の原初的なあり方、本来的なあり方に戻っていることだ。太古の時代は、歌は全員参加で、一緒になって、歌ったり、踊ったり、したのである。村の人々が大きな焚き火の周りに集まり、ドラムの音に合わせて乱舞する姿を想像したい。

一体となった踊りと歌の習慣から、いつの間にやら、歌い手と聴き手が分離するようになった。職業的な歌い手が生まれたりした。聴き手の関心は、歌詞の内容とメロディーに集中していく。そのために、歌詞は洗練されていき、芸術性が高まる。またメロディーも美しさが求められていく。

原初の歌のあり方に戻ったと述べたが、ここで連想されるのは「歌垣」の習俗である。Wikipeidia 「歌垣」には、以下のように記されている。

歌垣(うたがき)とは、特定の日時に若い男女が集まり、相互に求愛の歌謡を掛け合う呪的信仰に立つ習俗。現代では主に中国南部からインドシナ半島北部の山岳地帯に分布しているほか、フィリピンやインドネシアなどでも類似の風習が見られる。古代日本の常陸筑波山などおいて、歌垣の風習が存在したことが『万葉集』などによりうかがうことができる。

歌というのは起源は求愛の儀式であったのだ。実際に歌謡曲でもAKB48の曲でも、ほとんどが愛の歌である。「今日の朝食のパンにつけたバターが美味しかった」とか、「全力で走ったので電車の時間に間に合ってハッピー」とか「玄関の電球が切れたので、新しい電球に交換した」というような日常を語る歌があってもよさそうだが、そのような歌はない。

カエルやセミは夏になると大きな声で鳴く。オスだけが鳴くのであり、自分の存在を示してメスを呼んでいるのである。自分の存在を示す、居場所を示すことは外敵から狙われて危険な行為なので、カエルは夜だけ鳴く。セミは葉の中に隠れて鳴くのである。

人間はカエルやセミよりも複雑なので、オスだけではなっくて、メスも鳴く。オスとメスが向かいあって求愛の言葉を掛け合うのが、歌垣である。現代では、カラオケボックスに若い男女がグループで入り、互いに歌いあうののが一番歌垣のイメージに近いであろう。

つまり、何が言いたいかと言うと、AKBの歌うスタイルが本来的な人間の歌と踊りのあり方を示すので、そのことがAKBの歌と踊りが人々にアピールする理由だ、と主張したい。

photo credit: 『AKB1/153 恋愛総選挙』@ 東京メトロ新宿駅 メトロプロムナード via photopin (license)
photo credit: 『AKB1/153 恋愛総選挙』@ 東京メトロ新宿駅 メトロプロムナード via photopin (license)