2016-09-05

高速道路を入っているとき、通常はCDを聞くが、このところラジオを聴くようになった。特にNHKの第一放送だ。その魅力はさまざまなバラエティーに富んでいることであろう。子供電話科学相談などは馬鹿にはできない。自分の知らないことをたくさん教えてくれる。そのほかには、落語界の話、ジャズの専門家の話、防災のことなど、いろいろと耳学問だが、知識は増える。

このまえ小説の朗読を行っていた。瀬戸内寂聴の短編を何篇か朗読していた。それぞれ、味のある話だった。ネットで調べると『わかれ』という短編小説集だったようだが、でもネットで書かれた小説のあらすじを読むとちょっと違う気もする。自分が聞いた小説は、たとえば、あるえらい女性の側人になった男性が、ある日夜に寝ているときにその女性がきて横に寝たという話や、不倫の相手だった女性が交通事故でなくなり、葬式に外でだけ参加する。そのときに、その女性のパトロンだった人とも出会い、二人でその女性の追慕をする、そんなような内容だ。自分は何か勘違いをしたのかもしれない。

ネットで調べると、ラジオ文芸館の8月27日の放送で瀬戸内寂聴「求愛」という内容で6つの短編が朗読されたとある。しかも概要があったので、それを下に記す。

2016年8月27日
作:瀬戸内 寂聴

90代半ばを迎えた瀬戸内寂聴さんの短編小説集「求愛」から6編を、アナウンサーの朗読と効果音で紹介する。
「求愛」:30数年ぶりに再会した高校の同級生、お互い配偶者と別れたと知り、急速に親しくなる。人生半ばを過ぎ、残された時間を分かち合いたいという男から女への求愛の手紙。
「ふるさと」:東日本大震災で一人ぼっちになった4歳の“僕”。貯金箱を壊して仙台の叔父の家からふるさとに辿り着く。そして同じように一人だけ仲間はずれになった松に抱きついて泣く…。
「露見」:元日に妻からの電話で別れ話を告げられた夫。情事と家庭を割り切っているつもりの夫だが、全てが携帯電話に残されたメールで崩れてしまった…。
 他に「夫を買った女」「移り香」「島へ」の3編を読む。

短編小説は6編だったようだ。聞いているときはとても引き込まれた。中高年の男女の愛の姿をいろいろな角度から語っている。また、9月3日の谷崎潤一郎の『秘密』という話も面白かった。

2016年9月3日
作:谷崎 潤一郎

主人公は20代の男性。気まぐれから浅草の寺での隠遁生活を始める。寺にいながら、刺激的で奇怪な事を求め、それに耽溺するという「秘密」を楽しもうとするうちに、女装に目覚める。夜な夜な世間の目を欺いて出歩いていたが、ある劇場で、美貌の女性に会う。それはかつて自分が捨てた女であった。その翌日から2人は逢瀬を再開するが、女の家までの往復は目隠しをされて人力車に揺られて行くため、「夢の中の女」「秘密の女」に好奇心を掻き立てられることになる。  女の秘密を暴くことに夢中になる男。秘密が秘密でなくなった時、男はさらなる刺激を求めて…。

こんな小説を聞きながらドライブするのならば、長距離のドライブも苦でなくなるなと感じた。朗読を聞いていると、女性はどんな人なのか興味が深々とわいてきた。神秘的な女性、おそらく男性が勝手に想像で作り上げていく面もあるだろうが。谷崎潤一郎の語りの巧みさに感心した。でも、この話、自分は文字で読んだらこんなに感動しなかったと思う。文字で読むとすぐに読んでしまう。朗読ならば、ゆっくりと話が進展するので楽しめる。いわば、美しい田園地帯を車で疾走するのが文字で読むことであり、ゆっくりと周りを見渡しながら歩くのが朗読を聞くことのようだ。

この『秘密』という話、朗読したのは男性かと思っていたら、意外と女性で、渡邊あゆみというアナウンサーだった。声が落ち着いているので男性と勘違いしたようだ。

bunngeikan