『銭形平次捕物控』をkindle で購入した。124作品を収録している作品集で、『野村胡堂作品集214作品』という本の一部として、銭形平次捕物控は124作品が収録されている。他にも銭形平次の物語はあるが、それらは現在、収録準備中のようだ。とにかくこれだけまとまった分量を200円で購入できるのは有難いたいことだ。

Wikipediaで調べると、銭形平次の捕物控は全部で383編が書かれているそうだ。すると、このkindle 版は捕物控の3割ほどが収録されている。全部ではないのは残念だが、まあ、しばらく楽しめそうだ。

銭形平次は昔テレビ番組であった。何回もテレビ番組化された。自分の覚えているのは舟木一夫が歌っている主題歌であった。

おとこだったら1つにかける
かけてもつれた謎を解く
誰がよんだか、誰がよんだか、銭形平次

こんな風な出だしであった。何かあると銭形平次が銭を投げて、敵を撃退する点が痛快だ。自分も真似してみたいが、一円玉では威力はないだろうし、やはり十円玉ぐらいがいいだろう。500円玉が一番威力がありそうだが、もったいなくて投げる気にはなれない。

さて、この捕物控だが、順番に読み始める。「金色の処女」「振袖源太」「大盗懺悔」「呪いの銀簪」と4つほど読んでみた。

感想だが、短いので簡単に読める点はいい。長編の探偵小説のように長く込み入っていると、誰が誰だか分からなくなることがある(でも松本清張などは長編でも飽きないで読むことができる)。

江戸時代の風景が想像できて楽しい。江戸とよばれていたころの東京はまだまだ緑が多くて、自然に溢れていたことが分かる。

登場する女性がすべて絶世の美女である。中年の女性や年配の女性は登場しない。少なくともメインの登場人物としては登場しない。

このあたりは現実離れしている。自分は昨日は買い物をするために、あるスーパーマーケットに行った。その時のことを思い出す。スーパーであるから女性が多い。7割は中高年の女性であり、若い女性は少なかった。そして若い女性の中でも、絶世の美女はほとんどいなかった。

しかし、この捕物控は、登場する女性は、100パーセントの確率で、若くて美女である。このあたり、非現実的であるが、江戸時代という昔のことであり、もともと、日常生活からの脱出のために、読者は捕り物控えを読むのであるから、非現実的である点はむしろ歓迎されるだろう。

それから、これらの捕り物控えは『オール読物』などの雑誌に初出である。男性の読者がほとんどであろう。その意味では、男性目線で話が書かれているのも仕方がないだろう。

逆に、女性向けの小説は、これまたイケメンばかりが登場する。背が高く、清潔感があって、知性があって、自分に優しくて、かつお金持ちである。

どうやら、女性も男性も、自分に都合のよい世界を夢想するようだ。