籠池泰典氏だが、何となく面白くて憎めない人だと思う。稀代の詐欺師で、堂々と嘘を言う。一番大胆だと思うのは、自らが経営する幼稚園「塚本幼稚園」を天皇陛下ご夫妻が行幸されたという嘘の話しを園内の広報誌に載せることだ。さらには、それを外部から閲覧できるホームページにも堂々と掲載したことである。

近畿財務局との交渉では利用できる名前は何でも利用してやろうとの大胆さだ。関係をもった有名人の名前を並べ立てたという印象だ。しかし、天皇ご夫妻が行幸されたなどという嘘は、私のような小心者には到底思いつかない考えである。

さて、この籠池夫妻は大阪拘置所に拘留されていたが、さる5月25日に保釈となった。その時の記者会見をYouTube で見たが籠池氏の様子は堂々たるもので感心した。まず、自作の句を披露する。「早朝の 志を得る 初夏の風」である。私には、この句が上手いのか下手なのか分からない。まあ、こんな風に句作を楽しんだりと風流な人なのだな、という印象は受けた。

「今上天皇は憲法改正に賛成しておられないと思っております」という発言が突然、前後の脈絡もなく飛び出してきて、聞いている方も混乱してしまう。

安倍首相に対するメッセージとして、「貞観政要という唐の太宗が書いてます。『君子たる道は、先づ百姓に存すべし』。分からん人は調べてください」と述べる。自分はまったく知らなかった言葉なので、Google で検索すると、「味園博之のブログ-文武両道「空手道と南洲翁遺訓」他古典から学ぼう」というブログに説明があった。

君たるの道は、必ず須(すべから)く先づ百姓を存すべし。『貞観政要』
=君主としての道は、必ずぜひとも人民たちをあわれみ、恩恵を施さなければならない。

この引用もあんまり、当日の会見の内容とは関係のないようだ。籠池氏は自分を百姓に例えているのか。それとも頭に浮かんだ句を単に並べただけなのか。さらには、吉田松陰の名前も出したりで、聞く方はさっぱり分からないというのが本音であろう。

しかし、古今東西の漢籍などには通じているようで、すこし長い話になると、いろいろな引用句が出てきて、聞く方を煙に巻いてしまうのではないか。その意味では、楽しめるかもしれない。

籠池泰典氏は堂々とした口ぶりである。役所というところは減点主義なので、役人たちは保身に走り、減点されないようにと必死になる。言葉尻をとらわれないようにという姿勢を見ていると、対照的に、籠池氏の暴れ回る姿が想像できる。

これから、籠池氏を利用しようと何か企む人が接近するかもしれない。面白くて憎めない人なのだが、何か政治的に利用しようと接近すると、近づいた人は大けがをしそうである。野党は政治運動に人を利用しようとしているが、この人には近づかない方がいいだろう。