2016-01-27

『老人地獄』を読み終えた。第4章で「相次ぐ厚生年金基金」の解散という項目はとても印象深かった。厚生年金基金とは何か。その197ページには次のように書いてある。

高度成長時代、「国の金を貸すから、投資で従業員の年金を増やしなさい」という仕組みができた。これが厚生年金基金という企業年金の仕組みだ。

これは、高度成長時代ならば、機能した仕組みだ。しかし、バブル崩壊後は大企業は国に厚生年金部分の積立金を返した。しかし、中小企業はその動きは遅くて、いたずらに損害を増やしてしまったようだ。そして、ついには解散に追い込まれた基金がたくさんある。解散すると一番困るのは、正直に年金料を払ってきた従業員である。長年支払ってきて、それが霧のように消えてしまった。

2012年2月に、AIJ巨額詐欺事件が発覚した。それは厚生年金基金の積立金を運用していたAIJ投資顧問がデリバティブでの運用失敗であった。預かっていたお金のほとんどが消えてしまった事件があった。

この会社に限らず、多くの投資信託が高度成長時代からバブル時代への流れを完全に読み間違えたのであるが、そのために多くの厚生年金基金とそこが持っていたお金が消えてしまった。

自分はどうなのか、時々考える。自分は会社員であった時期が4年半ほどある。会社員として働いた期間が短いので通常の厚生年金はもらえない。代わりに、毎年12月1日に、企業年金連合会から42,874円が自分の口座に振り込まれる。月あたりで3,573円ほどもらうことになる。これだけでも助かる。毎月の2日分の食費ぐらいにはなるだろうと思う。

自分が勤務していた会社は企業年金制度はなかった。そのかわりに、よく生命保険の人が来て、勧誘していた。生涯年金としても利用できる生命保険である。しかし、当時の自分は20代で老後のことなど考えたことはなかった。今から考えると、少額でもいいから継続して入っていればよかったとも思う。

とにかく、人が自分で貯金して老後に備えるということは絶対にできない。給料から天引きにしてもらわないと年金保険料などは絶対に支払えない。

この本『老後地獄』はよく取材されている。そして、多くの悲惨な事例が紹介されている。読んでいて、陰鬱になる。夫婦で30万年金をもらっていても、大病したらそれが吹っ飛ぶという例も紹介されていた。病気したら、たちどころに老後地獄に落ちてしまう。それに備えるには、保険に入ればいいのだが、老人が入れる保険はほとんどないか、保険料が高い。

できることは、自分で健康管理に気をつけることだが、年を取ったら誰でも病気になる。とにかく読んでいて救いのない本である。