この数日は『天皇の料理番』を視聴した。大変面白いドラマであった。佐藤健演じる秋山篤蔵が天皇の料理番へと出世してゆく物語である。昔から熱中しやすくて飽きっぽい主人公が、ふとしたことで料理に関心を持つようになりコックとして生きてゆきたいと考えるようになり、東京やパリへ行って修業をして、ついには宮廷のコック長として迎えられるという話だ。

主人公の妻(俊子)を演じるのは黒木華である。この人の下の名の読み方を「はな」と思っていたが、「はる」のようだ。黒木華は美人ではあるが、やや地味顔でもあり、このドラマには適役となっている。

主人公が最初に修業するのは、華族会館である。そこのコック長を演じるのは、小林薫である。これはなかなか好演である。主人公に厳しくもあり、助けてくれている。小林薫は『深夜食堂』のマスターを演じていて、そこでも渋い持ち味を出している。私の中では、小林薫=料理名人、と完全にインプットされてしまった。

主人公の兄を演じる鈴木亮平も名演技だ。次第にやつれてゆき、病気で長くないことが分かる。本人は役作りのために、20キロの減量をしたというが、プロの人たちの心構えはすごいな、と感心した。度量が大きくて、主人公を暖かく見守る姿勢に共鳴する視聴者も多いだろう。(鈴木亮平は『俺物語』では逆に体重を30キロも増やしたとのこと、ドラマに対する気合の入れ方が違う)

主人公がパリ滞在中の恋人のフランソワーズも興味ふかい女性であった。主人公から日本に一緒に行こうと誘われるが、結局は歌手になる夢を捨てきれずに、パリに残る。この話は実話ではなくて、フィクションとして加えられたようだ。

このドラマは、杉森久英が書いた本『天皇の料理番」に基づいている。杉森は『天才と狂人の間』という本(島田清次郎の伝記)を書いており、この本も有名だ。杉森は石川県出身の作家であり、島田清次郎も石川県出身である。私も石川県出身であるので、何か親近感を抱いている。

杉森久英が秋山篤蔵の伝記を書いたのは、福井出身ということで、同じ北陸出身なので共鳴した部分があるのだろう。

Huluでこの話を見たのだが、過去の素晴らしいドラマや映画がこのように簡単に視聴することができる。便利な世の中になったものだと感心する。