このところ、豊田真由子議員の暴言が話題となっている。「このハゲー」などと怒鳴る声をYouTube で聞いたりした。なるほどこれは問題だと思う。

ただ、この豊田議員は、無理をしているのではと言う気もする。思うことを堂々と言う自分自身に酔っているのではないか。一般の人ならば、品位にかかわると思って避ける言い方も平気でする自分、罵詈雑言を平気で言い放つ自分は、格好いいと思っているのではないか。

男社会の中で生きてゆく女性は時々は、男性以上に男性らしさを示そうとする。イギリスのサッチャー首相は声を低くするトレーニングを受けたという。女性特有の高い声は、政治家の世界では、不利であると考えたのだ。

豊田真由子議員の男性のような低い声、女性らしさの全くない語彙と表現、を聞くと、男性社会である政治の世界で、生きてゆく彼女なりの計算を感じるのだ。

しかし、暴言はよくない。むかし、私は会社員だった。私の上司は歯に衣着せぬ言い方をするのが特徴であった。常に尊大な態度で威張っていた。その上司は、自分以外の人間を酷評した。しかも陰に隠れてではなくて、堂々と酷評したのだ。さすがに本人の前ではあまり大きな悪口は言わなかったが。

その上司には権力を持っていた役員が付いていた。その役員は社長になりそうであった。上司はそのような出世コースまっしぐらの役員からの信頼があつかった。私の上司は、自分のスタイルを作り出そうとしていた。罵詈雑言を平気で言える人間、互いが気を遣いながらそっと生きてゆく世界で、上司の型破りな姿は異色だった。

私はそんな上司を見てハラハラした。威張るならば、偉くなってから威張ればいいじゃあないか。人を酷評するのは、役員になってからすればいいのではないか、という感想だ。因幡の白ウサギは、向こう岸につく前に、サメに本音を語ったので、皮をはがされたのだ。上司も役員になってから、サイコロで言えば「あがり」になってから威張ればいいのにと思っていた。

そしたら、後ろ盾になっていた役員が病気で急死してしまった。上司は後ろ盾がなくなり、急に孤立してしまった。悪口を言われた人々の反撃で、子会社に飛ばされてしまった。本人にはとても無念のことであったろう。

威張ること、人を酷評すること、これは会社のような競争の激しい世界では、逆効果になることが多い。とにかく、万事そつがなく、皆に愛嬌を振りまいて、八方美人のタイプの方が出世するように思える。

豊田真由子議員は次の選挙に出るのかどうか分からないが、政治生命は絶たれたように思える。秘書を含めて、皆に愛嬌を振りまいていれば、万事上手くいったのにと思う。才能がある人だけに、その点は残念である。