『手ぶらで生きる』を読む。筆者である澁谷直人氏は、現在23歳で毎月7万円で生計を立てている。そのミニマリストとしての行き方は、なかなか真似できるものではない。

この人は一か月の生活費を公表している(p.46)。合計で74,087円だ。家賃が2万円、食費が2万円などで、合計すると確かに74,097円となる。しかし、年金は払っていない。健康保険税は払っていない。これは、20代だからできることで、30歳以降の人生の後半期のことを意識しはじめる頃には、年金がきわめて大切になってくる。また、病気もだんだんとかかるようになってくる。

渋谷氏は投資をするといっているが、投資は必ずしも確実ではない。下手をするとゼロになる。年金は少なくなるが、少なくともゼロにはならない。年金が支給されないような国家破綻になったら、投資も何もすべてお仕舞いになるだろう。

同氏の部屋の写真があったが、エアコンはないようだ。今年みたいに猛暑の日はどうなるのか。エアコンは使わなくて大丈夫なのか。などと突っ込みたくなる点も数々あったが、全体的には合格点が付く面白さであった。


以下自分が参考になった項目を列挙する。

2018年の4月から、飲食店が余らせてしまった廃棄食品を毎月定額(1980円)で食べられる制度が始まったそうだ。これは、「reduce go」というサービスである(p.55)。このサービスを利用すると、毎月の食費は1980円に抑えることができるという。(ただ、これは東京の23区に住んでいないと無理だと思う) 

この人は、現金はできるだけ持ち歩かない主義だ。ほんの小銭を小銭入れに入れておくだけだ。その代わりに、スマホに Apple Pay を登録して、それをもっぱら使っている。また、楽天Edy を使えば便利だそうだ。(p.66)

私自身は結婚式や葬式のために黒い礼服を持っている。時々は無駄だと思うこともある。筆者によれば、儀式用の服は、ファションレンタルを使えば、いいそうだ。そこで廉価で借りる。終われば返すのだ。そうすれば、家の中に無駄なスペースをおいておく必要はなくなる。とにかく、無駄な服を購入する必要は無くなるのだ。(p.81) 

品物を購入しても不要になれば手放す。ヤフオクかメルカリで売ればいいのだ。そうすれば、所有の必要はなくなる。必要なときに所有して、不要になれば手放す、なるほどと思う。(p.87) 

貧乏人の家は返って品物で溢れかえっている。(確かにそうである。自分の知っている、ある親戚の家がそうである。金がないのに、安い品物であふれている。これはものがなくなる恐怖を常に抱えているからでもあろう(p.165)。 

p.194 には、同氏の有人の「るってい」君が紹介されていた。Twitter を紹介しておくと以下のようだ。

るってい君は、スマホ一台だけで旅をするそうだ。旅の資金はクラウドファンディング(募金活動の一種)でつのり、持ち物は一切持たず、スマホだけを手に国内外の旅行先に飛ぶ。支払いはスマホの電子決済のみだそうだ。衣服も現地調達、レンタルなどを利用する、という。(私などシニアから見ると想像もできない生き方をしている)

人に何かを贈るときは、消耗品がいいとのことだ。これは確かにそうだ。新婚の夫婦が鍋や電気スタンドを複数もらっても困ってしまう。それくらいならば、商品券とか図書券などがよい。とにかく、残らないもの、消耗品がいいのだ。(p.216) 

年賀状も無駄だ。この悪習が早く廃ることを願うのだ、と述べている。私も年末になると2,3日を費やして年賀状を送る。面倒だと思うし、資源の無駄とも思うが、しばし、この悪習はあと数十年は続くであろう。私の息子たちは年賀状のやり取りはしていない。(p.227) 

筆者は、タバコの害について述べている。タバコを吸う人とは絶好も構わないようだ。(p.220) なお、私はタバコはそんなに苦手ではない。若い頃は数年は吸っていたので、タバコの匂いをかぐと、懐かしい気持さえもおこる。家内はタバコ嫌いなので、レストランでも絶対に禁煙席に座るのだが、だんだんと愛煙家には生きづらい世の中になってきた。

以上、なかなか面白い本であった。シニアが真似するには厳しいかなとも思うが、自分が若ければこんな生活をしてみたかったとも思う。なお、恋愛はするのだろうが、筆者は結婚はしないだろう、ましてや子育てなどはしないと思う。

なお、筆者のような生き方が可能なのは、つまらない生き方をしている凡百の庶民の存在が前提だろう。ホリエモンにも言えるが、彼らのような生き方をしない沢山の人がいるので、その人たちのおこぼれをいただいて、澁谷氏、るってい君、ホリエモンたちは生きている。そんな感想を抱いた。