U-nextで松本清張の映画を二つ見た。一つは、『点と線』である。福岡市香椎の海岸で発見された男女の死体だが、一見すると心中のように思えたが、そのことに疑問を持った2人の刑事の事件を解明してゆく様子を描いている。
私がこの小説を読んだのは50年以上も前のことだ。そして、今、映画で見ると、ずいぶんといろいろなことを省略してあるなという感想だ。でも当時の時代がよみがえり懐かしい。まだ新幹線がない時代だ。東京駅から福岡まで列車で行く。なんと優雅な時代だなと感心してしまう。自分が小学生の頃の汽車旅を思い出す。機関車で煙を吐きながら旅をする。あの、シュシュポッポの音が郷愁をそそる。道の多くは未だ舗装されていない。自動車も古雅が雰囲気である。
このように舞台背景はいいのだが、ストーリーはかなり省略してあるようで、納得いかない。ドラマにして10話ぐらいにすればいいのだが、映画にすると短すぎて、物足りない。ただ、Wikipediaでしらべると2007年にドラマ化されており、2話になっており、合計で4時間ほどだ。これならば、かなり細部まで小説を復元できていいのかもしれない。機会があれば見てみたい。
次は、『波の花』を見た。これは面白かった。特に、若い検事と人妻との愛の交流には心打たれた。Wikipediaを調べると、1960年に映画化されて、その後8回もドラマ化されたそうだ。これは何回でも、いろいろな俳優と女優で、みてみたい物語だ。若い検事は津田雅彦が演じ、人妻は有馬稲子が演じている。若い検事の一筋の思い、そしてそれを受け止めようとするが、最後には身を引いてしまう人妻の悲しみ、富士の樹海にさまよってゆく有馬稲子の姿、これらは見る人の心を打つことは間違いない。
この映画も背景は私には懐かしい。女性の着物姿も凜として美しい。今は女性の多くはスラックスで歩いているが、当時の女性はスカートや着物姿であったのだ。なお、当時の映画では多くの人がタバコを吸う。この点は私には気になってしまう。その当時はタバコが害毒という認識はなかったのだ。
さて、この映画を見て、自分が未だ元気なうちに清張の映画や舞台の場面を訪問してみたい。聖地巡礼をしてみたいという気持になったのだ。でも、富士の樹海は遠慮しておくかな。