私はずっとどこかの組織に属していた。はじめは会社員で次は教員であった。そのために、国民年金や厚生年金・共済年金は天引きで無理矢理引かれていた。当初はその金額は負担ではなかったが、高齢化社会の進展につれて、徐々に負担が増えてきた。でも、好きでも嫌いでも、天引きされるので、拒否はできなかった。

今から考えると、これでよかったと思う。自分で貯めようと思っても決して貯金などはできない。必ず、緊急事態は生じるし、そのために貯金を下してしまう。どんな緊急事態でも引き下ろせないもの、それが年金である。それゆえに貯まるのだ。

息子達は、将来は、年金は受け取れないから、年金の掛け金は納めない。などとも言っている。たしかに、息子達が老人となるころは年金はどうなっているのか心配だ。社会保障制度が崩壊していくとしても、生活保護、介護保険、雇用保険、国民健康保険の方が先につぶれるだろう。これらの制度が存在しない国もある。

あるとしても、国が責任を持つのではなくて、個人が民間の健康保険制度に加入するのである。アメリカは、貧困層のためにメディケイドという公的制度がある。費用は安い。しかし、医者はメディケイドでは稼ぎが少ないので、治療者数を制限したり、低レベルの治療しかおこなわない。まあ、医者も人間であるから、稼ぎにならないのならば、ぞんざいに患者を取り扱うのは仕方ないだろう。

先日、アメリカ人の方とそれぞれの健康保険制度の話を聞いたが、日本の方が優れているように感じた。アメリカはとにかく、自己責任という国である。国が関与することは日本よりもはるかに少ない。アメリカの大都市はホームレスがあふれている。その方は、日本にはホームレスが少ないと感心していた。日本は今後は貧困化がすすむであろうから、ホームレスの数もアメリカ並みに増えるかもしれない。が、何とかして制度を守ろうとする姿勢は日本の方が強い。

とにかく、日本はかなり手厚く社会保障の制度が行き渡っている気がする。公的な年金制度は日本政府は税金を投入してでも守り抜くだろう。たしかに、受給年齢は下がるし、金額も減っていくだろう。だが、年金ゼロよりははるかにいい。

私の親戚に年金ゼロの人を知っているが、その人の将来を考えると絶望しかないであろう。本人はけろっとしている。でも、パートなどもできなくなると、恐ろしいことが始まる。息子達には、その親戚の話をしては、「とにかく年金の掛け金は納めておけ」と言っている。