2015-10-20
『老後破産 長寿という悪夢』を今読み返している。p.114に、「老後破産」の怖さは、じわじわと追い詰められていくところにある。」と書いてある。若いころの破産ならば、やり直しの可能性がある。自己破産を宣告して、またゼロからやり直すことができる。若くて健康ならば、起き上がり小法師のように何度でも起き上がることが可能なのだ。
しかし、高齢者になったら、次第にやり直しの可能性が減っていく。そのために、人々は貯金をする。あるいは、不動産を購入したり株券を購入したりと自己防衛に走るのだ。
その少ない貯金がもしも大病をしたり、家族の借金返済のために使い切ったりしたら、すぐになくなる。川西さん(仮名、83歳)の事例は、50年間大工をしていた人の話だ。いま、国民年金だけに頼り、足りない分は貯金から少しづつ下ろして補っている。前立腺ガンが見つかり手術はうまくいったが、再発防止のために高価な抗がん剤を注射する必要がある。孤独に生きる。どこにも出かけないで家でテレビを見るだけである。少しづつ貯金が減っているので、この調子ならば、あと5年ほどで貯金がゼロになりそうだという。
このような事例を読んでも、解決の妙案があるわけはない。その意味では読んでいて息苦しくなる。小説ならば、最後はたいていハッピーエンドであるが、この本では重苦しいままである。
若い人たちは自分には関係ない話だと関心を示さないかもしれない。私のようにいよいよ高齢者になる人間にとっては、人ごととは思えない。自分の貯金額や年金額を計算してどのようになるか。慌てて紙に書き出して計算を始めたりする。
この本で示された人々は何が原因でこのような老後破産に陥ったのか教訓を得たいと思う。この本で示された事例は極端な例ばかりであろうから、自分の場合は少しはマシだなと安心する人がいるかもしれないが、多くの高齢者は自分のことと重ねて読んで不安を感じるであろう。とにかく、自分が得た教訓は以下の通りになる。
- 会社などの大きな組織にはできるだけしがみつく。
- 脱サラをするときは、よほどの勝算があるときだけ。非常な危険が伴うと覚悟しておくこと。
- 健康管理に気をつけること。
- 賃貸アパートではなくて、できるだけ自宅を持つこと。
- 年金はできるだけ掛けておくこと、個人年金の支給は満期一括払いではなくて、月払いにすること。
- 介護サービスなどの利用の仕方を知っておくこと。
- 頼りになる人、家族でも誰でもいいから、を見つけておくこと。
- 見栄の出費はしない。冠婚葬祭はできるだけ義理を欠くこと。
こんなところか。健康管理に気をつけると言っても、年をとれば自然と病気になるし、病院にも行かなければならなくなる。いろいろと考えると憂鬱になってくるだけだ。