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2015-11-07

自分の母親は最後の数年間は胃瘻で栄養補給をしてきた。胃瘻はアメリカで1980年代に開発された方法だ。この方法のおかげで母は少なくとも1年半は寿命をプラスさせてもらった。

『超高齢者医療の現場から』(後藤文夫、中公新書)を読んでいたら、「米国では高齢の意識障害者や重度認知症患者には胃カテーテルによる経管栄養や胃瘻の手術などは行わないのが通例」(p.190)とある。、「日本では特養では死ぬまで入所して、その期間は平均4年以上だが、アメリカのホームでは、25%が入所して1ヶ月以内になくなり、半数は半年以内に亡くなる」(p.220)そうだ。

重度認知症の患者に対する考え方の違いがある。アメリカでは、誤嚥性肺炎が疑われても抗菌剤や経管栄養を行わないそうである。文化の違いだが、アメリカ人は割り切りがすごいなと驚く。自力で栄養を取れなくなった患者を無理やり生かしておくのは、かえって人道に反するとの考えのようだ。

しかし、さらに加えて医療費の問題があると思われる。アメリカの医療費は高い。アメリカでは、国民皆保険制度が存在しない国である。そのために、医療費は自費で全額負担するか、民間の医療保険に入り、医療費をカバーしてもらう方法がある。何れにしても負担額は多い。

わたしの親戚がアメリカ人と結婚している。その人はアメリカで出産した。出産した日の午後には退院して自宅に戻った。日本ならば、産後も一週間ぐらいは病院にいるのが普通である。これは医療費が高いためにそうせざるを得ないのだ。

生活水準が非常に低い家庭ならば、メディケイド(Medicaid)があり、高齢者や身体障害者にはメディケア(Medicare)という制度がある。ただ、メディケアを受けるには、前もってメディケアタックスを収めておく必要がある。

アメリカの金持ち階級は良質の医療を受けられる。もちろん、それは金を持っているからだ。貧困層も政府からの援助で医療を受けられる。問題は中産階級だ。中産階級は病気になると医療に関する負担金は中途半場ではない。高額の治療費で破産する例もあるそうだ。そんなこともあり、負担金が半端でない胃瘻の手術は家族は二の足を踏むのだと思う

わたしの母は脳梗塞となり、自力で食事ができなくなった。そのとき色々と考えた。選択支は(1)何もしないでそのままにする、(2)胃瘻をおこなう、(3)点滴をおこなう、などがあるようだ。母の場合は、医者からのアドバイスで胃瘻という方法をお願いした。

胃瘻の場合は、平均余命は2年ほどとのことだが、母の場合は、1年半ほど生きることができたのである(平均よりも少々短かったが)。少しでも寿命を伸ばさせてもらったことで感謝している。とにかく、日本では国民皆保険があり、さらには介護保険がある。それらを利用させてもらった。比較的、低負担で入院できて、胃瘻のサービスを受けることができた。ありがたかった。

アメリカでは、胃瘻は大変なお金がかかると思う。あくまでも胃瘻を選択するときは、家庭内で胃瘻をおこなうのではないか。そんなこともあり、アメリカは胃瘻を選択する例が少なくて、それゆえにアメリカ人の平均寿命を減らしていると思う。

photo credit: pratice via photopin (license)
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