ショーンK、こと、ショーン・マクアードル川上の動画をいくつか YouTube で見ていた。私は次のような感想をいだいた。

この人は確かに格好いい。人生をいろいろ経験してきたように語る口調に渋みがある。そして、ナイスミドルであり、人生を知り尽くした落ち着きと自信がある。これで、英語がペラペラであり、経済学や経営学の知識が豊富だときたら、この人の話すことをほとんどの人は信じるだろう。テレビ映りはいいし、コメンテーターとして最高の人だと思う。

英語を語る動画も見たが、日本人英語ではなくて、ネイティブのような発音であり、そのくせ、知識をひけらかすという驕りもない。完璧な人だという印象だ。

問題は、この人が高卒であったという点だ。大学以降の学歴やコンサルタントとしての仕事も嘘だったということだ。稀代のペテン師だったのだ。

でも、この人を見てみると、学歴なんか何だという気がしてくる。実力はあった人なのに、たまたま、大学卒業という経歴がなかった。それだけだ、という気がする。

私の祖父は町会議員に立候補したことがある。小学校しか出ていなかったが、チラシの経歴の欄に、「蔵前工業学校」と書いたのである。祖父が物故して、しばらくして父が祖父の遺品を整理していた。その時に、町会議員の候補者の一覧表を見つけた。その学歴の欄に「蔵前工業学校」と書いてあったので、父はビックリしていた。この「蔵前工業学校」というのは現在でいうと、「東京工業大学」にあたるようだ。

その当時の町会議員はほとんどが小学校卒業であった。町会議員には学歴を詐称していた人も多い。ただ、それが許される雰囲気の時代であった。でもたいていの町会議員は、詐称するとしても、せいぜい中卒(今で言うと、高卒ぐらいか)程度ぐらいまでであった。しかし、祖父は東京工業大学卒と詐称したのであり、やり過ぎであった。チラシを見た父親は、「あの当時は、みんな大げさに盛っていた。しかし、うちの爺さんは、こりゃ、ひどいわ、今でいうと東工大じゃないか」と驚いたのである。

自分の祖父の人柄は、孫思いの良きお爺ちゃんであった。いろいろなことを知っていた。国の政治や経済、町や村の問題点を知り尽くし博識だった。役場の仕事も立派にやり遂げた。

そんな祖父のことを自分は思い出す。学歴が問題なのではない、実力が問題なのだ。実力があればそれで良いではないか、と言いたい。しかし、今のネット社会は嘘がすぐにばれるから恐ろしい。ショーン・マクアードル川上も70年ぐらい前に生まれていたならば、ジャーナリズムの頂点まで登り詰めたかもしれない。